【コスト激減】製造業を変える3Dプリンタ治具製作ガイド
3Dプリンタと治具製作の基礎
3Dプリンタを使った造形物の作成の基本的な内容については、下記をご覧ください。
それでは早速3Dプリンタで治具を製作する際のメリットについて、ご紹介していきます。
3Dプリンタ治具製作のメリット
- 高いアジャイル性(敏捷性)
アジャイル開発と3Dプリンタを組み合わせることで、迅速なプロトタイピングや柔軟な改善が可能になります。深夜時間帯の10時間程度で実物大のプロトタイプを作成し、設計上の問題や改善点を早期に発見できます。
3Dプリンタは、試作だけでなく自動車生産やその他製造業の製造プロセスにも活用されています。
たとえば、ホンダは2016年に3Dプリンターでボディー外装を造った小型電気自動車(EV)「MC-β」を公開しています。また、Radford Motors社は、Radford Lotusタイプ62-2の量産車の試作と製造のために3Dプリンタ技術を最大限活用しています。
- 高いコスト削減効果
高いアジャイル性で見られるように、試作回数を増やして品質を向上することができるだけなく、その結果試作コストを大幅に減らすことが可能となります。また、3D設計でしか実現できない複雑構造を成形することで、従来は複数部品の組立が必要だった部品を一体化することで、組立コストまで含めたトータルコストを削減することができます。
- 軽量化
3Dプリンタでは、内部をハニカム構造などの中空構造の設計が容易にできるため、造形物を軽量化できます。試作目的だけでなく、強度に問題のない方向性で設計を行えば、軽量性を求められるロボットハンドなどで実製品にも使用することが可能です。最近の3DCADに実装されていることもあるトポロジー最適化の技術により、最適な構造を自動計算する技術で、パーツごとに、必要な機能を満たした上で軽量化をはかることができます。
- 時短効果
切削加工と比べると成形時間が長いと誤解されることの多い3Dプリンタですが、切削加工には6F材などの母材の調達時間が発生します。3Dプリンタではフィラメントがあれば、3Dデータを設計するとすぐに成形することができます。
確かに母材の在庫を持っているという条件では、同体積で切削加工した場合には製作時間に不利になるケースもありますが、50x50x50mm以内のサイズは12時間以内で成形できるケースも多いので、帰宅前に成形を始めると出社時には完成させることが可能です。もっとも、加工依頼先のすりあわせの時間や加工完成までの時間まで含めて比較すれば、3Dプリンタの時短効果に優位性があることは明白です。
- 持続可能な製造
軽量化でも見たように、ハニカム構造など中空構造の成形ができるので、材料の節約と廃棄物の削減が可能で、しかも切削加工に要する電気代と比較すると圧倒的に低いため、環境に優しい製造プロセスが実現できます。
治具とは – 役割と機能
3Dプリンタを用いた治具制作は、製造プロセスにおいてさまざまな方法で利用され、その目的や利点が多岐にわたります。以下にその概要を説明します。
目的と利点
- 製造精度の向上
治具は部品の位置決めや固定に使われ、製品の一貫した品質を保つのに役立ちます。3Dプリンタで製作された治具は、製造方法によっては高い精度で作成できるため、細かな調整を不要にすることもできます。
- 生産性の向上
製造プロセスにおいて、治具を使用することで手作業の時間やエラーを減らし、全体の生産スピードを上げることができます。3Dプリンタで迅速に治具を製作することで、ラインのダウンタイムを最小限に抑えることができます。
- コスト削減
従来の方法で治具を製作する場合、切削加工や専用工具が必要になることが多いですが、3Dプリンタを使用することで材料費や加工費を大幅に削減できます。また、設計変更が容易で、必要に応じて迅速に対応可能です。
- 柔軟な設計と高いアジャイル性
3Dプリンタを用いることで、複雑な形状や特殊な機能を持つ治具を簡単に設計・製作できます。これにより、各製品や製造ラインに最適化された治具を用意することが可能です。
- 短納期
3Dプリンタを使用することで、治具の製作期間を大幅に短縮できます。これにより、新しい製品の試作や生産ラインの変更にも迅速に対応できるため、市場投入までの時間を短縮できます。
使用例
- 組立治具
部品の組立て作業を補助するための治具。正確な位置決めや保持を行うことで、組立作業の効率と精度を向上させます。
- 検査治具
製品の寸法検査や機能検査を行う際に使用する治具。複雑形状の嵌め合いチェック用の治具などは3Dプリンタで製作するととても大きな効果を発揮します。製品の品質管理において重要な役割を果たします。
- クランプ治具
加工中の部品をクランプするための治具。複雑形状のクランパーを3Dプリンタでスピーディーに製作するととても大きな効果を発揮します。加工の精度やスピード、安全性を向上させることができます。
治具製作に適した3Dプリンタの選び方
3Dプリンタの種類と特性
FDM、SLA、SLSという3Dプリンタ技術について、治具製作に適した方法を比較して説明します。
FDM(Fused Deposition Modeling:溶融積層法)
技術
樹脂フィラメントを溶かし、ノズルを通して押し出し、層を積み重ねてオブジェクトを作成します。
材料
主にABS、PLAなどの熱可塑性フィラメントを使用します。
長所
コスト効率が良く、幅広い材料が選択でき、使いやすい。大きなパーツの製作に適しており、材料オプションも豊富。
短所
SLAやSLSに比べて精度が劣ります。積層痕が見えることがあり、滑らかな仕上げのためには後処理が必要です。
SLA(Stereolithography:光造形法)
技術
レーザーを用いて液体レジンを固化させ、層ごとに立体を作成します。
材料
UV光で固化する光硬化性レジンを使用します。
長所
高い精度を実現し、細部にわたる精密なパーツを生産できます。表面が滑らかで、視覚的なプロトタイプに最適です。
短所
装置や材料のコストがFDMに比べて一般に高い。使用されるレジンの機械的性質が熱可塑性プラスチックに劣る場合があります。
SLS(Selective Laser Sintering:選択的レーザー焼結法)
技術
レーザーを使用して粉末状の材料を焼結させ、一つの固体構造を作り出します。
材料
主にナイロン粉末を使用し、ガラスやカーボンファイバーなどの添加物を混合することもあります。
長所
強度と耐久性に優れた部品を生産できます。支持材が不要で、未焼結の粉が支持材として機能します。
短所
装置や運用コストが高い。色の選択肢が限られており、後処理で染色することが多いです。
治具製作における適合性
FDM はコスト効率と使いやすさから、XY方向で精度が±0.1程度の粗い治具に適しています。
SLA は高精度で滑らかな仕上がりが求められる治具に好まれ、消費財産業など見た目が重要な業界で使用されます。
SLS は高い機械的ストレスに耐える機能的な治具の製作に最適で、自動車や航空宇宙産業でよく利用されます。
各技術には長所と短所が存在し、特定の要件によって選択が左右されることが多いです。それぞれの技術の利点を理解し、製造プロセスのニーズに最も適したものを選択することが重要です。
治具製作に最適な3Dプリンタの選定基準
ユーザーのニーズに基づいて、企業によって選定基準は様々となります。適切な3Dプリンタの選定は弊社でも行っておりますので、ご相談ください。
続いて、治具設計のポイントについてお伝えしていきます。
3Dプリンタでの治具設計のポイント
効率的な3Dプリンタ治具のCAD設計から成形までのフロー
続いて、3Dプリンタで使用する材料はなにが適しているのか、紹介していきます。
3Dプリンタ用材料の特性と選択
3Dプリンタには様々な材料や特性があります。特徴について、表にまとめたので、ぜひご覧ください。
主に、5種類の材料について特性をまとめてみました。
実際に、表をご覧頂くと、平均的なものがABSと◎と〇が2つずつのonyxにしぼられてきます。ただ、onyxに関しては、材料費用が高価格なので、治具製作でのフィラメントの材料としてはあまり現実的ではありません。
治具製作として使用して頂くフィラメントの材料はABS一択でOKです。弊社でもABSをおススメしております。では、続いてはおススメのABSについて、メリット、デメリットなどお伝えしていきます。
FDMにおいては治具に適した3Dプリンタ材料はABS一択でOK
治具製作に最適なABSのメリット
- 追加工しやすい
- 成形体が良い
- 靭性が高い
- 費用対効果が高い
という主なメリットがあり、コストが激減できます。
ABSのデメリット
- 悪臭
- 環境に悪い
- 反りやすい
と文字で見るとイメージが悪くデメリットを強く感じがちですが、上記2点に関しては、工業目的であれば特に問題はありません。
3Dプリンタで治具を成形するステップと注意点
では早速3Dプリンタ前の準備の段階から注意点とともに紹介していきます。
構想
【構想のポイント】
- 工数を要する手作業を改善する
- 治具製作のコストに見合う工程の調査
以下の事例研究を参照(参考サイト)
http://tachibana-tokuiwaza.com/fa/other/jig.html
【備考】
<治具の事例>
- 加工治具
- 組立治具
- はんだ付け治具
- 検査治具
FDMにおいて治具目的であればフィラメント材質はABS一択でOK。
続いては、3D設計にはいります。
3D設計
【3D設計のポイント】
Fusion360などの3DCADによる設計
3DCADデータを設計
↓
STLファイルに書き出す
【備考】
3DCADの価格帯です。
<ハイエンド>
- Creo
- CATIA
<ミドルレンジ>
- Inventor
- SOLIDWORKS
<ローエンド>
- Fusion360
3D設計をしたら、続いてGコード作成からの転送に入ります。
Gコード作製・転送
【Gコード作成・転送のポイント】
STLファイルをスライサで輪切りにしてGコード作製
↓
Gコードを3DプリンタにUSBメモリorWi-Fiで転送
【備考】
<スライサによるパラメータ調整>
近年はメーカー指定のスライサを使用すると調整レスだが、微調整用に基礎知識として下記の参考サイトを参照。
Slic3r | 目次 / 3Dプリンタの設定をいじる / Slic3r まとめ
<サポート材の設定>
オーバーハング箇所に、材料の垂れ防止のために設置する必要がある
では、次からは実際に成形をしていきます。
成形
【成形のポイント】
<注意事項>
- 温度
- ヒートベッドの管理
- ノズルの管理
- 材料残量チェック
【備考】
室温が低いと反りやすい→冬季はヒートベッドの温度を高めにする。
それでも反ってしまう場合はヒートベッドにスティックのりを塗る。長期間使用しない場合はノズルのクリーニングを行う(パージフィラメントなど)
大きな成形品を製作時は途中で材料不足にならないように残量チェックして、積層造形方式の場合はフィラメントを交換して、光造形方式の場合はレジンを十分に充填する。
では、最後に治具の後処理をしていきます。
治具の後処理について
【治具の後処理のポイント】
<注意事項>
- ヒートベッドからの剥離
- サポート材の除去
- ±0.1mm以下の精度を追求する場合は研磨加工を行う
【備考】
<剥離>
- ヒートベッド上の貼付シールが破れないようにコテを使用して慎重に剥がす
<サポート材除去>
- 上部サポート箇所を破損しないようにラジオペンチ等で慎重に剥がす
<精度>
- XY方向は±0.1mm程度
- Z方向は±0.1~0.5mm程度
<研磨>
- ±0.1以下の精度が必要な場合は、研磨加工ができる業者に依頼する
それが不可能な場合は光造形方式の成形を検討する。光造形方式は材料費がかさむが、積層造形方式よりも精度を出しやすい。アクリルを用いれば追加工もし易い。
コスト対効果:3Dプリンタ治具のROI分析
伝統的な治具製造とのコスト比較
3Dプリンタ治具と伝統的な治具製造法のコストと時間の比較を行います。
画像でもご覧頂いたように、成形実例のコストの例の一つです。
上記と同じで、弊社での3Dプリンタでの成形実例のコストをご覧ください。
3D PRINTER|有限会社イージー・エンジニアリング
3Dプリンターによる革新的な治具の事例
産業別革新的治具の事例研究
弊社で独自に調べた様々な産業で実際に成功した3Dプリント治具のケーススタディを紹介します。
- 自動車関係での事例研究について(以下、参考サイトです。)
https://news.sharelab.jp/study/practice-car03/
- 組立治具の事例研究について(以下、参考サイトです。)
http://tachibana-tokuiwaza.com/fa/other/jig.html
- モニター製造における事例研究について(以下、参考サイトです)
https://news.sharelab.jp/3dp-news/others/3dprinter-case-carbon-eizo-20210126/
弊社でも事例研究に関して記事にしております。
3Dプリンタで治具を製作する具体例|ブログ|有限会社イージー・エンジニアリング (ez-eng.jp)
では、次に実際に3Dプリント治具の使用例を紹介していきます。
3Dプリント治具の使用例
独自の問題解決のために3Dプリント治具がどのように使用されているか、使用例を提示します。
弊社での使用例として、加工治具を記事にしておりますので、下記もご覧ください。
まとめ
3Dプリンタ治具製作の基礎からどのような過程で治具製作は行われるのか、フローもご紹介いたしました。
また、3Dプリンタの種類や特性、治具設計のポイント。3Dプリンタで使用する材料の特性やコストや事例研究もご紹介いたしました。
弊社でも治具製作のご依頼を受けております。貴社にとってメリットがある製作ですので、よろしければ下記からお問い合わせください。